Recumbent title 立志編 何故私はリカンベントに乗ることにしたのか?


皆さんは、リカンベントを知っているだろうか?
背もたれ付きのシートに座って、車体の前方についたクランク・ペダルを漕いで進む独特のスタイルを持つ自転車なんだけど・・普通の人は知らないだろう。私も実際に走っているのを見かけたことは無かった。
私がリカンベントの事を知ったのは15年ほど前、行きつけのサイクルショップ(エゾサイクル製作所)に展示されていたTUNAMIというメーカーのリカンベント試作車を見たときだった。
まず、その特異なスタイリングに衝撃を受け、次にどんな乗り心地か知りたくなった。エゾの店主の「走り出したらものすごく楽、でも乗りこなすには何日か練習が必要だった」というセリフが印象的だった。それ以来、ずっとリカンベントは自分の心の中に気になる存在として残った。

今所有している自転車は山走りや通勤の足用のPEUGEOTのMTBとフォールディングバイク(折りたたみ自転車)のBD-1、どちらも大変気に入っていて修理を重ねながら15年近く乗っている。これで自分の用途には必要且つ十分なのだが、何か物足りなさを感じていた。かといってサイクルショップへ行って最新のアップライト(普通の自転車)を見ても、今所有している自転車で十分だと思うだけだった。
自転車で自分がワクワクできることは、もう無いのだろうか?

BD-1とMTB

そこで思い出したのがリカンベントだった。
ネットで調べてみたら、マイナーなりに熱心なファン達が居ることが分かった。
その魅力はなんだろう?
最も身近で馴染みがある筈の自転車に、まだ自分の知らない世界があるなんて、そう考えるだけでもワクワクする。
リカンベントは自転車の最も初期の時代から存在するそうだが、何故今に至るも普及しないのか?その点にも、持ち前の探求心がうずく。
仕事で福祉機器の研究をしてきた自分にとっては、乗車姿勢が楽なリカンベントは、腰椎を痛めた人や高齢者(の場合はトライクになるかな)に向いているのかもしれないという気持ちもあった。様々な可能性や期待に胸が高鳴った。

初期のリカンベント

アルペンの山スキーからテレマークスキーに乗り換えた時を思い出す。
私の場合、山でのアルペンスキーの技術が一定水準に達したとき、ワクワクする感覚が失われてしまった。アルペンならある程度安全に登って滑ることができるけど面白さに欠けると感じるようになってしまったのだ。
その状況をブレークスルーできないかと思い、テレマークスキーに転向したら、苦労もあったけど得られた喜びはそれを大きく上回り、確実に自分の人生を変えてしまった。自分にとってテレマークスキーとの出会いは、一生の間にそう何度もない貴重な機会だったと思う。
テレマークの魅力はここでは詳しく語らないが、テレマークには合理的じゃないけど理屈では計れない楽しさがある。理性のアルペン、感性のテレマークと言われる所以だ。
自転車にもテレマークスキーと同じ事が言えるのではないだろうか、理性のアップライトに対する感性のリカンベント。

冬の自分にはテレマークスキーがある。夏の自分には何があるのだろう?
そう考えたとき、リカンベントに乗ろうと心に決めた。2009年、44歳の春だった。




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